満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第36章 血鬼術を解いてよ宇髄さん1※
すぐに蝶屋敷に来て欲しい、と胡蝶しのぶの鎹鴉により伝えられた。
こちとら昨夜の任務で休息はあまりしていないが、胡蝶の頼みなら仕方ない。
あいつを怒らすと、得体が知れない。
疾風の如く蝶屋敷へと急いだ。
「なんだよ急に。珍しいな」
蝶屋敷の一室の、診察室とも呼べる部屋の椅子に座ってそう聞く。
この俺に頼みだなんて、きっとろくなことではないだろう。
向かい合わせで座っている、菫色の派手な瞳がこちらに向いた。
「…あなたにしか頼めない任務があるんです、宇髄さん」
実は、と言いかけたところでガチャ、と音がして扉が開き、胡蝶の継ぐ子のカナヲが、茶をお盆の上に乗せて持ってきた。
「…どーも」
それを受け取って、口に含む。無口なカナヲはぺこりと挨拶して部屋を出て行った。
…そういえば、カナヲがお茶を運ぶだなんて珍しいことだ。
いつも診察や治療のときにちょこまかと動いている子は、今日は見ていない。
「…あいつは?いねえの?」
「あいつとは、澤村波奈のことでしょうか」
ピクリ、と動いた瞳は、じっと宇髄を見つめる。
なに、こえーんだけど。
一瞬怖気付く宇髄に、胡蝶はハアとため息を吐いた。
「その波奈が、実は鬼の被害に遭いまして」
「…!…無事なのか」
「えぇ、命に別状はないです。…ただ」
命に別状はないと聞きホッとする。
「鬼の血鬼術に遭いまして」
「ほぅ、血鬼術」
「…なんでも異性に精を注がれないと死ぬ血鬼術だそうで」
「……はぁ?!」
精を注がないと死ぬ血鬼術?
宇髄は胡蝶に呆れたように繰り返し尋ねた。