満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第25章 前世から※【宇髄天元】
生まれたときから前世の記憶というのがあって、
それは夢のように曖昧で不確かなものだった。
ただ、銀色の髪をした、左目を眼帯で隠し、左手を包帯で巻いている彼の姿はぼんやりではあるが覚えていた。
そんな彼を、現世のわたしは常に探していたように思う。
常に探していた彼に、高校の入学式に出会った。壇上に立って挨拶をする彼は、左目も左腕も健在ではあったが。
宇髄天元先生。背が高く、その優美で華やかないで立ちは、いつも学校では女の子たちの視線を奪い、黄色い声を連れてくるようだった。
バレンタインも段ボール箱あふれるほどの人気ぶりだ。
外見だけでなく中身も、ときに校舎を爆破する破天荒なところもあるが、優しく気がまわるところも彼の人気の要因だった。
ーーー100年前と変わらず、彼はとても遠い人だった。
彼と現世で関わるうちに、夢のように曖昧だった前世の記憶が確かなものへと、次々と思い出した。
前世は雲のような存在の音柱様。
わたしは彼に一線を置いていた。
心の底から彼のことが好きだったから、迷惑をかけたくなかった。
妻帯者である、上官の音柱様。
現世では奇跡的に、なぜかはわからないが、わたしの恋人になってくれた。
こんな年下の、子どもっぽいわたしのことを、彼はいったいどこを好きになってくれたのだろう…。
疑問ではあるが宇髄さんは紛れもなくわたしの恋人だ。
しかし、だ。
恋人同士で一緒に暮らしているということは、当然にも夜のふれあいは自然と行うものではある。
それなのに、彼とのセックスは一度も成功していない。
男性と付き合ったことのない、彼が初めてのわたしとて、セックスがどういう風に男性が気持ち良くなるのか知っている。
宇髄さんは、一度も最後まで行き着いていない。