満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第3章 嫉妬の先に※《煉獄杏寿郎》
夕方の風が吹き少し肌寒い時間帯のことだった。
「波奈!任務だ。少々行ってくる」
隊服の上に炎の羽織りを着た杏寿郎が波奈に声をかけた。
杏寿郎の妻である波奈は、ちょうど夕飯の準備にとりかかろうと、野菜を取り出しているところだった。
「また急に、ですね」
「火急とのことだ」
鬼は夜に現れる。
よって夕方から出かける、なんてことは日常茶飯事だが、やはりいつだって送り出す方は不安がつきまとうものである。
「そうなのですね!いってらっしゃいませ。お帰りをお待ちしてます」
波奈は不安の気を杏寿郎に見せないよう、
笑顔で応えた。
両手をそっと杏寿郎の顔を撫でた。
杏寿郎は波奈の目をじっと見つめて、波奈の手を自分の手を重ね、ぎゅっと握った。
「あぁ。留守を頼むよ」
にこっと杏寿郎は微笑んだ。
「今回はどこへ?」
「遊郭だ!では行ってくる!」
「え?」
ゆうかく??
ゆうかくって…
爽やかに遊郭だ!って…
杏寿郎からでたその似つかわしくない言葉は、波奈の胸をざわざわと騒がせた。