満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第21章 禁欲の果てに※【宇髄天元】
「ーーーん、誕生日おめでとー」
「えっうそっ、えっなに?!」
波奈は驚いて手を口元へ。
「ははっ!ド派手なリアクション」
差し出した手のひらサイズの箱に、波奈はまた驚いた様子だった。
ホテルの駐車場。帰りの車の中でそれを渡した。
悩みに悩んだそれを、波奈は喜んでくれるだろうか。
「…こんな、先生、高価なもの、貰えないよ」
言葉尻が震えている。泣いてる?
俺はぎょっと慌てて波奈の顔を見る。
「ーーそんな高価じゃねーよ、気にすんな」
「う、でも、これ有名なジュエリーブランドだよ」
「いーのいーの。オトナなんだから派手につけとけ」
波奈はもう泣きそうな顔で箱を開ける。
その箱を持つ波奈の手は震えてて地味に笑える。
「…先生嬉しい。ありがと…大事にする」
箱をゆっくりと開けた波奈が震える声でそう言った。
…うん、喜んでくれて嬉しい。悩んだ甲斐があった。
「つける?」
「うんっ」
キラッと光る一粒ダイヤのネックレスを手に取り、波奈の首元へ持っていく。両手が波奈の鎖骨を通り、波奈を包み込むような姿勢で、ネックレスの金具を引っ掛ける。波奈は俺の近さにどぎまぎするように少し顔を赤らめた。
ゆらりと揺れる小さなダイヤは波奈の首元で光る。
「似合う」
「ほんと?毎日つける!」
「毎日つけてください」
5月。波奈は大学生になってから、交友関係も広まった。
在学中は波奈の交友関係は嫌でも自然と把握できたが、違う環境になってからはそうはできない。
俺の知らない友人たちと連絡を取り合うのを横目でいつも見ている。LINEのグループを作り、やり取りをする波奈。
このネックレスは、その波奈の友人たちの中の異性に、ゆるく牽制するためでもあった。
ネックレスを贈るという深層心理は聞いたことがあるが、全くその通りだなと自分ながら呆れてしまうが。
毎日つけるだろう、そのシンプルで高価なネックレスは誰から貰ったものなのか、そいつらに教えてやればいい、と思う。