満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第11章 お忍びの逢瀬※《宇髄天元》
静かな夜。今日は蝶屋敷では、隊士の怪我や病床の患者の容態も、比較的穏やかだった。
ゆったりとした日中を過ごしたからだろうか、
それとも2週間前に任務で出かけた宇髄が、任務期間を過ぎても未だ帰ってこないことをなんとなく考えているからだろうか。
波奈はなかなか寝付けずに、ぼんやりと天井を見つめていた。
『いつになったら俺の嫁になってくれんだよ』
任務前に会ったとき、宇髄に抱きしめられながらそんなことを言われたことを、ふと思い出した。
波奈は思い出すたび胸がキュンと締め付けられる。
嫁になれ、妻になれ、と会うごとに毎日言われるたびに波奈は顔を赤くしてドギマギしてしまう。
そのーあのーと誤魔化し、問題を先送りにしてしまうのだ。
最近ではもう宇髄の3人の奥方様にも、
で、いつ来てくれるの?と外堀も固められつつあるのだ。
宇髄と婚姻関係になりたくないわけでは、決してない。
むしろ言われるたびに嬉しいし、宇髄の実は生真面目な故に、波奈を妻にと責任をおいたいいう気持ちも十分に伝わっている。
ただ、波奈の、ここ蝶屋敷を離れることがとても不安なのだ。
幼い頃から住んでいるこの場所を離れることがとても怖くなる。
それに、隊士の怪我や、重傷者の手当てなど、昼夜問わず働いている身としては、ここを出ていくわけには行かない、とも思うのだ。
でも、わたしが宇髄さんのお嫁さんになれば、
任務から帰ってきたらすぐに宇髄さんに駆け寄れる。
宇髄さん
宇髄さん
宇髄さん…
波奈は任務から帰ってこない彼のことを思い、行き場のない不安と恋しさをグッと堪えるように、目をつぶった。