満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第9章 雨音と君の音《宇髄天元》
「…っ!」
湯浴みを終えて通された部屋に入ると、
隊服ではなく着流しを身につけた宇髄天元が、
頬杖をつきながら窓際に腰を下ろしていた。
その色っぽさにぴたと固まってしまう。
「何してんだ、こっちこいよ」
「う、あ、はい…」
ぎこちなく宇髄の近くに正座する。
「遠い」
「えっ…」
パシっと手首を掴まれて、またたくまに波奈は宇髄の懐にぽすんと入った。大きい身体の宇髄は、すっぽりと波奈を包む。
「…っお、とばしらさま…」
「その音柱様ってやめね?恋人同士だろ?」
「こいびと」
「恋人」
宇髄は波奈をひょいっと持ち上げて、
はいここ座るーと言いながら、
自身の膝に波奈を跨らせるような形で座らせた。
その近く恥ずかしい格好に波奈はカッと赤くなる。
宇髄は波奈の顎を手でぐいっと持ち上げた。
「天元か旦那様、どっちがいい?」
と波奈の目を見つめながら聞いた。
「えっ…」
宇髄の形の整った顔で見つめられ、波奈は口をパクパクしてしまう。
「そ、そんなふうに呼べません…」
「だーめ」
宇髄は波奈の顎を掴んだまま離さない。
指で波奈の唇をツツと触る。
ビク、と波奈は後退りする。
鬼殺隊最高の位である身分の者に対して、
呼び捨てをするなんて。
それに、旦那様と呼ぶのはもっと恥ずかしい。
ていうか婚姻関係ではないし。
波奈は途方に暮れてしまった。
「波奈? てんげん 」
指で教えるように、波奈の唇を触る。
「……て、」
波奈は観念して声を震わした。
「て?」
「………う、宇髄さん」
「なんでだよ!」
宇髄は波奈のほっぺたを片手でむにゅっとおしつぶした。
「らってはずかひいでふ」
顔を赤くする波奈はもういっぱいいっぱいらしい。
「……ま、いいや。そのうちぜってー呼ばす」
宇髄は余裕そうに波奈を見つめた。