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満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】

第9章 雨音と君の音《宇髄天元》



昼間あれだけ晴れやかだったのに、しとしとと降り出した雨は、瞬く間にバケツをひっくり返したような雨に変わり、波奈は慌てて雨を少しでもしのげる木の下へと急いだ。

秋の季節も手伝って、少し濡れた白の白衣により、波奈の肌はぶる、と震えた。

今日は蝶屋敷から、療養している隊士の自宅へと出向いた。鬼殺隊隊士の傷の治りが思うよりも悪く、膿を出し幹部を清潔にし、薬を塗り包帯を巻くのがいささか時間がかかってしまった。
隊士の家を出る頃には、真っ黒な雲が空一面覆っていた。

消毒薬や薬や包帯を詰めた風呂敷を胸に抱えながら、
やみそうにない雨を、ため息をつきながら見つめる。

1ヶ月前、任務に出た彼は、無事だろうか。
この雨は凌いでいるだろうか。
彼は冷たく濡れていないだろうか…。
波奈はふと思い出した愛おしい彼に想いを馳せて、
無事を祈る。
1ヶ月も会えていない。
悲しさと寂しさが心を締め付ける。

やみそうにない雨。
もうすぐ日が暮れてしまう。
もう走って蝶屋敷まで帰ろうか…
そう思っていた頃だった。


「おい」

「ぅわあ?!」

気配もなくいきなり肩をかるく叩かれた。波奈はびっくりして声を出した。
キラっと光る銀色の宝石がチャリンと音がなった。

後ろを振り返ると、大きい男が、雨の雫をポタポタと落としながら、波奈を覗き込んでいた。

「お、音柱様っ…!」

「やっぱりお前か。何やってんだこんなとこで」

圧倒的存在感の彼を目の前にして、波奈は一歩下がってしまった。

「今日は訪問診療の日でしてっ 帰る頃にいきなり降られました」

「ほーん。ド派手な雨だな」

2人は空を見上げる。


思いがけずに彼と会えた。
嬉しさが胸いっぱいになる。
泣き出しそうになる。
この雨が恵みの雨のように思えてきた。


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