満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第8章 小さな箱の中で《宇髄天元》
「音柱様!昨日はありがとうございました!」
こちらに近づいてペコリと頭を下げる波奈。
パッとあげた顔は眩しい。
汚れもない。
昨日魔がさして、耳に口付けしたのを、今更ながら罪悪感が宇髄を襲った。
「別に。お前もあんなとこに閉じ込められて不運だったな」
「不運だなんて…。閉じ込められたのが音柱様と一緒でよかったです!」
俺で?!よかった?!
やはり波奈は俺のこと…
ドっと胸が付かれる。
「強くて優しい音柱様がいたので安心でした。
昨日あなたを鬼狩りへ送り出したときから、
ずっと無事を祈ってました。
夜もふと目が覚めた時、
縁側であなたの無事をお祈りしていたら
気づけば閉じ込められたんです!」
『波奈はあなたをお慕いしているようですね』
胡蝶の声が脳内にこだました。
カっと熱が宇髄の頭に上がるのを感じた。
「…音柱様…?」
バクンバクンと言うことの聞かない心臓の音がうるさい。
顔が熱くなるのを片手で覆う。
地味な子どもだとずっと思っていた。
なのに、目の前にいるその彼女に、こんな派手に心を鷲掴みされるとは全く思いもしなかった。
「音柱様…?あの、?」
赤くなり手で額を隠す宇髄を、心配そうに覗き込む。
「帰るわ!じゃーな!」
ヒュっと宇髄は姿を消した。
波奈は見たこともない宇髄の姿を不思議に思った。
次はいつ宇髄に会えるだろうか…
波奈はまたたくまに消えていった際に吹き抜けた風を感じながら、次の再会を心待ちにした。
小さな箱の中で 完