第2章 ゆれるこころ
「の歌、俺は好きなんだ。もっと聞かせてくれ、それでおあいこだな」
そんなことでいいのかと思わず言ってしまいたくなるけど、それでも彼の役に立てると言ってもらえたようで嬉しかった。
柔らかく口角が上がる。
「じゃあ、とびっきりの癒しの歌を。サボさんへ送ります。」
息を吸い込む。大切に言葉を紡ぐ、音を響かせる。
ゆったりと、ゆっくりと。
「〜♪」
静かな音が部屋に響き渡る。
だけどそこに悲観はなく、心の隙間にそっと入り込んで包んでいくそんな繊細な歌。ただ彼へ贈るもの。
体をゆっくりを左右に揺らしながら私は歌う。
少しでも届いてほしい、癒されてほしい。
私のこの歌が貴方の助けになるなら、私は声が枯れるまで歌うのに。
サボさんも目を閉じながら私と一緒にゆっくりと揺れている。
「♪〜」
歌が止んだ。
シンとした空気が部屋に残る。
気がつけばお互い手を握っていた。
それが嬉しくて、私は少しだけ力を込めた。
それに応えるように彼の手にも力が加わる。
「やっぱり、の歌はいいな。また聞かせてくれよ」
「はい、もちろんです」
あぁ、好きだな。
頭で何かを考えうこともなく、心でそう思ってしまった。
困るな、こんな気持ちもってたらダメなのに。
気づいたらダメなのに。
「…サボさん」
「ん?」
「いえ、もうお休みになりますか?」
「あー、そうだな。今日はこれ以上何もないしな」
サボさんはそのままベッドに横になり、私入れ替わるように空中に浮いた。膝を抱えてふわふわと漂う。
そのままお互いに何かを発することはなく時間が過ぎていく。しばらくすると小さな寝息が聞こえ始めた。
「おやすみなさい」
私からは触れることができないけど、頭を撫でるように手を動かし私はそのまま部屋からそっと抜け出した。
なんとなく、朝まであの部屋にいれる自信がなかった。
早朝前に戻ればサボさんもわからないだろうし、海を眺めることができる場所に腰を落ち着けた。
雨が降っていた後とはおおえないくらい、空は晴れて星が見えた。
キラキラと光るそれらに向かって手を伸ばす。
捕まえれるわけでもないけども、手を伸ばせば何かが起こるんじゃないかと期待する。
もちろん、そんなワケないけれども。