第8章 シングルベッド
私は彼になんて声をかけてあげればいいのか少し悩むも、上手い言葉が全く浮かんでこない。
私には"きょうだい"という存在が居ないから、彼の兄弟に向けての嫉妬する気持ちはあんまり分からないけど…その嫉妬する気持ちだけは何となくわかる気がした。
そんなことを考えながら、伏せ目がちになりながら黙り込むイザナくんを見る。
まつ毛も長くてすごく綺麗な顔してるのに、イザナくんの目にはどこか苦しみと憎しみ、悲しさがこもったような目をしている。
そんなイザナくんをほっとけなくて、私は優しくイザナくんの髪を撫でた。
イザナ「……!」
『……私の周りにイザナくんみたいな心情の子が居ないから私には何とも言えないけど……マイキーくんにはマイキーくんのいい所があるし、イザナくんにはイザナくんのいい所があるんだからね。どっちも同じってないと思うし、イザナくんはイザナくんでいいんじゃない?』
イザナ「…………オレのいい所…」
『いい所いっぱいあるよ、きっと。私はまだ会ったばっかりだからイザナくんの事はよく分からないけどね』
イザナくんの髪を撫でながら話していれば、イザナくんは目を閉じて黙り込んだ。
……あれ?イザナくん寝るのかな?
頭撫でられるのって何歳になっても落ち着くからきっとこのまま寝ちゃうんだろうなぁ…なんか可愛い。
『もっと素直に甘えられたら少しは楽になるのにね…』
イザナくんが寝てしまったのかと思い、ついボソッと独り言を呟いた。
すると、撫でている手をイザナくんに振り払われた。
『…えっ』
手を振り払われた事によって若干ショックを受けフリーズしていれば、振り払った手を掴まれそのまま抱き寄せられた。
吃驚する間もなく、そのままイザナくんに強く抱きしめられた。