第23章 兄弟
仕事場に着けば、この間の男の姿があった。
すれ違うのすら嫌だな…なんて思いながら見ていれば、パッと相手と目が合ってしまった。
…うわ、やらかした。
目合わせてどうするの私…
……てか、あの人…何かめちゃくちゃ怪我してない?
まぁ…避けるのも何か気が引けるし…、頑張って挨拶だけでもしておこうかな…なんて大人の対応を装うと思い挨拶をしようと口を開いた。
『あ…』
「ひぃ……」
相手は私が挨拶をする前にそそくさとその場から逃げて行ってしまった。
『………え?』
…何?え、何何何…!?
私何かした?いやいや、私がされた側なんですけど!?
なんで私が怯えられてるの?意味不明すぎるんだけど……?
私が困惑していれば、噂好きの同僚が私の傍に寄ってきたかと思えば、耳元でコソッと話しかけてきた。
「名前ちゃんに言い寄って来てたあの人、昨日不良に絡まれて怪我したらしいよ」
『え?不良…?』
「女の子に対して嫌なことしてるからバチでも当たったじゃない?ざまぁって感じ。名前ちゃんも困ってたでしょ?これに懲りたらもう絡んでこないと思うから良かったね」
『…あ、はい……』
不良に絡まれたのになんで私の顔見て怯えてるの?
私が絡んだわけじゃないの…に………
いや、待て…?
不良???
昨日あの人から助けてくれたのって………
頭に浮かんだのは場地くんと千冬の顔だった。
絶対それじゃん…!!!!!
なんであの時千冬に目隠しされたのか、今になって理解出来た。
あの人場地くんにボコられたんだね、うん理解した。
…………私もあの子たちを怒らせたらボコられるのかな……舐めた態度取らないようにしないと身の危険が………
助けてくれた場地くんと千冬には心底感謝はしているものの、それと同時に自分の身の危険まで感じてきたのは言うまでもない。