第22章 トラウマ
あれから暫く真一郎と世間話を沢山して有意義な時間を過ごした。
楽しい時間もあっという間で、辺りは既に暗くなっていた。
真一郎「…あ。いつの間にか外も暗くなったな。そろそろ名前を返してやらないと」
『なんか長居しちゃってごめんね』
真一郎「いや、もう客も来ないし。名前とゆっくり話したこと今までなかったから、話せてよかった」
『…私も話せて楽しかった』
真一郎「そうか?名前も楽しんでくれてたなら良かった。…気持ちも落ち着いたか?」
『え?』
いきなりの言葉に私は間抜けな声が出てしまう。
私の気持ちを見透かしているかのような言葉に心臓が跳ねる。
真一郎「名前ってわかりやすいからさ」
『そ、そんなに…!?』
真一郎「おう。まぁ少しでも元気になってくれたなら良かった。もう外も暗いし家まで送っていく」
そう言って真一郎は立ち上がれば店を閉め始めた。
『そんないいのに…』
真一郎「女の子一人夜道に放り投げるなんて出来るわけねぇだろ?」
女の子……?私が?
何それ、めちゃくちゃときめくんですけど…
女の子扱いされるってこんなに嬉しいことなんだ。
女の子呼びにときめいていれば、真一郎は自分のバイクのエンジンをかけバイクに跨りながら私にヘルメットを手渡してきた。
真一郎「バイクで送るから後ろ乗れよ」
『え?あ、ありがとう真一郎』
現実に呼び戻されれば、私はヘルメットを受け取り被ればバイクの後部に跨り真一郎に腰に軽く手を回した。
真一郎「…もっと」
『………ん?』
もっと?とは?
私は真一郎の言葉の意味を理解できずについ聞き返す。
すると真一郎は、私の手を掴み自分の腰に巻き付けた。
真一郎「……落ちるから、ちゃんとしっかり掴まっとけ」
『あ、ごめん…ありがとう』
落ちない程度に真一郎の背中に抱きつく形になれば、バイクはゆっくりと自宅に向かい走り出した。