第22章 トラウマ
『こんにちは〜…』
中に入ればすぐに声をかけてみる。
『居ないのかな…』
声をかけてみるものの、全然返事が返って来ず留守にしているのかな…なんて思っていれば、場地くんが誰かと話している声が聞こえた。
真一郎「ケースケか?なんだ、何か用事か?」
場地「いや、オレは用事はねぇけど名前が…」
真一郎「名前?…あぁ、もしかして名前ちゃん?」
その会話が耳に入れば、私はすぐに店の外へと出た。
『あ、真一郎さんこんにちは…!お買い物ですか?』
真一郎「お、名前ちゃん。少し買い足しがあったから留守にしてたんだ。もしかして…オレに会いに来てくれたのか?」
『えっ?あ、いや…その』
心做しかすごく嬉しそうな顔をしながらそんなことを聞いてくる真一郎さん。
いや…そんな顔されると…
会いに来たわけじゃない…なんて言えなくなってしまう!
でも会いに来たなんて言ったら私キモくない…?
別にそんなに仲良い訳では無いし…なんかストーカーみたいで絶対に引かれるよね?
ここはなんて言うのが正解なんだ…!!!
『えーっと…』
真一郎「そんなに照れなくてもいいだろ?名前ちゃんが会いに来てくれるなんて思ってもみなかったから嬉しい」
何も言っていないのに勝手に解釈している真一郎さん。
私が会いに来たと勝手に解釈しているものの、それを嬉しいという感情になってくれていると思うと何故かドキッとしてしまう。
『た、たまたま通ったので…』
場地「いや、名前がここに寄れって…」
『あぁあーーーーー!場地くん、ありがとうねほんとに!』
余計な事を言おうとする場地くんの言葉を自分の声でかき消しなんとか誤魔化す。
真一郎「まぁ、折角だし寄ってけよ。帰りはオレが送ってくからさ」
『え?でも…』
真一郎「いいからいいから」
『まっ、ちょっ…!?』
真一郎さんは有無を言わさずに私の背中に手を添えて強制的に店の中へと押し入れられてしまった。
去り際に場地くん達を見れば不満げな顔をしていて、私は心の中でめちゃくちゃ謝った。