第20章 合鍵事件
千冬「お詫びって…なんの?」
『えっ?…あ、いや…その…この間の…』
千冬「この間……お詫びされるようなこと何もねぇけど…」
不思議そうに考えながらこちらをチラ見してくる千冬。
…あれ、気にしてるの私だけ?
そもそも覚えてないとか…!?
いや、まぁ忘れてるなら忘れてる方がいいんだけど…
でも…自分の気持ちが落ち着かないから一応お詫びしたいんだけどなぁ……
『えっと…あ、お詫びとか関係なしになにかして欲しいこととか、欲しいものとかあれば全然言ってくれていいんだよ…!』
千冬「えっ……急にどうした?」
千冬は私の言葉に驚き目を見開きながらこちらを見てくる。
こんだけ必死だと何か不審がられるのでは無いかと思ったものの、千冬は不審がることなくただ驚いているだけだった。
すると、千冬は少し考える素振りを見せればゆっくりと口を開いた。
千冬「……なんでもいいのか?」
『…えっ?……あ、ああ、うん…!私に出来ることなら…』
何でもいいとは言ったけど!
まさか出来ない要求とかしてこないよね…?
いやいや、千冬だし……彼女いるみたいだし…やっぱりお金かな……
そんな事を考えながら虚ろになっていれば千冬は少し顔を赤らめながら控えめに言葉を述べた。
千冬「……今度の休み、一緒に出かけねぇ…?」
『……へ?』
千冬の言葉に私は拍子抜けをしてしまい、マヌケな声が出てしまった。
千冬「……ダメ…か?」
不安げな、まるで子犬のような目で訴えかけてくる千冬。
なんだ…その可愛さは……
ノックダウン……
そんなの断るわけないじゃん…
『もちろんいいよ…!千冬ならいつでも大歓迎だし!』
千冬「えっ、マジ?…やった…、じゃ、じゃあ…週末!家迎え行くから…!」
『あ、うん…またね?』
千冬は嬉しそうに小さくガッツポーズをし、何故か逃げるように週末家に迎えに行くとだけ告げてコンビニから出て帰っていってしまった。