第16章 会いたくない人
『もう、いきなり引っ張ったら危ないじゃん…』
イザナ「犬のくせに口答えすんな」
驚いて目を閉じていたが、目を開くとイザナくんが至近距離にいた。
顔が近くて軽く息を呑むも、そのままぎゅっと抱きしめられる。
『…イザナくんって…甘えん坊だよね…』
抱きしめられれば、つい同じく抱き締め返しイザナくんの背中に手を回す。
肌が密着する感覚に不慣れ過ぎて少しドキドキしてしまう。
イザナ「…名前にだけ」
『え?』
イザナ「なんでもない」
自分にだけ甘えてくれると言うイザナくんが可愛くて愛おしく思えた。
心を許してくれてるってことなのかな……そう思えばなんだか嬉しくて、イザナくんは濡れた髪を優しく撫でた。
『不器用さん』
イザナ「…は?」
『もっと素直に甘えてくればいいのにって思って』
イザナ「…別に、甘えてやってるだけだから、オレの自由だろ」
『はいはい』
憎らしい口を聞いても、なんだか可愛く感じてしまう。
髪を撫で続けていれば、イザナくんはいきなり私の後頭部に手を回して自分の方に寄せればそのまま唇にキスをしてきた。
『んっ…!?』
イザナ「…ん」
いきなりのことに慌てて離れようとするものの後頭部を押さえつけられているため離れることは出来ない。
最初は普通のキスだったものの、唇を挟みながらキスしてきたかと思えば口内に舌を入れてくる。
そしてそのまま舌を絡められる。
『んんっ…い、ザ…っ』
イザナ「…ふっ…ん」
激しくもあり、ねっとりと絡められる舌に変な気分になる。
イザナくんの熱い舌と熱っぽい表情、そしてお風呂の熱さに逆上せたような感覚に陥ってしまった。