第16章 会いたくない人
『うわっ…!び、びっくりした…』
竜胆「あ、悪ぃ」
『あ、蘭ちゃんなら帰ったよ?』
竜胆「ん、オレも帰る」
『あ、うん…気をつけて帰るんだよ?』
竜ちゃんは靴を履けば再びこちらを向いた。
すると、いきなり私の手を取れば手の上に小さいメモを手渡してきた。
『えっと…これは』
竜胆「オレの連絡先。じゃ」
それだけ言い残せば、すぐに手を離し帰って行った。
竜ちゃんの背中を見送れば、手にあるメモに目をやった。
そこには殴り書きされたような字で連絡先が書いてあった。
…また知り合いが増えてしまった…
しかもヤンキー…はぁ……なんで最近ヤンキーばっかり…
そう思いながらもリビングに戻れば、鶴蝶くんが飲み物を飲みつつ座っていた。
私も腰を落とせばその場に座る。
『あ、鶴蝶くん…なんか慌ただしくてごめんね』
鶴蝶「いや、別に…お前顔が疲れてるぞ」
『えっ、そうかな?』
鶴蝶くんの言葉に私は自分の顔に手を置く。
ずっと静かでのんびりな生活だったのに、いきなりヤンキーに絡まれるようになって常に誰かが居る…みたいな生活に激変したから少し疲れたのかもなぁ……
『…なんか、年頃の男の子の扱いが分からなくて…』
鶴蝶「…別にそんな考えることねぇだろ。同じ人間だし」
『そうかな?あんまり年の離れた子と関わったことがないから…気に触ることしてないかな〜とか色々考えちゃって…って、ごめんね?つまんない話して』
鶴蝶「聞くことしかできねぇけど、いつでも愚痴くらいなら聞いてやるよ」
そう言って、私の頭をポンッと軽く撫でる鶴蝶くん。
見た目めちゃくちゃ怖いけど、めちゃくちゃ優しいじゃん…鶴蝶くん…。
女神に見えるよ…本当……
『ありがとう…鶴蝶くん。私もいつでも愚痴とか聞くからね…!』
鶴蝶「おう」
鶴蝶くんは嬉しそうに口角を上げて笑った。