第16章 会いたくない人
ドラケン「おい」
不満げな表情のまま呼びかけられては、私は首を傾げつつドラケンくんを見た。
『ん?どうしたの?』
ドラケン「もう帰った方がいいぞお前」
『えっ、ごめん…お邪魔だったよね?』
ドラケン「別に邪魔ではねぇけど…」
その様子に、真一郎はニヤニヤしながら二人のやり取りを見ていた。
ドラケン「外暗ぇし、あんまり遅くなんねぇ内に帰った方がいいんじゃねぇのか」
暗い中帰ることに対して心配してくれたんだと思えば何だか嬉しくなった。
ドラケンくんの厚意を無駄にしないようにそろそろ帰ろうと思った。
『あ…そうだよね?ありがとうドラケンくんっ、じゃあそろそろ帰るね?真一郎さん、お邪魔しました』
真一郎「あ、真一郎でいいから。また遊びに来いよ」
『あ、ありがとうございます…また来ます』
私はそれだけ告げれば、軽く頭を下げてお店から出た。
するとすぐにドラケンくんもお店から出てきた。
ドラケン「名前」
『あ、ドラケンくん…どうした?』
どうしたんだろうと思っていれば、ドラケンくんは私の近くに寄ってくれば自分の上着を私の肩に掛けてくれた。
ドラケン「その格好危ねぇから、これ着ていけよ。本当は送って行ってやりてぇけど、まだバイクの調整終わりそうにねぇからよ」
『え、ありがとう…なんかわざわざごめんね?また今度会った時に上着返すね』
ドラケン「おう…また今度な」
ドラケンくんに軽く手を振れば、また帰り道を歩いた。
名前の背中が見えなくなるまで見守っていた事を知るのは真一郎だけだった。