第1章 散る光の下の熱※/ジン
「特賞でーす!おめでとうございまーす!」
とあるショッピングモールでやっていたクジ引き。めんどくせぇ、と嫌がるジンを引っ張ってきて、無理矢理引かせたらまさかの特賞。
『えっ、ジン、特賞だって!』
「あ?よかったな」
『ジンが引いたからだよ!すごいすごい!』
ぴょんぴょんと跳ね回る私と相変わらず面倒くさそうなジン。受付の人から差し出されたのは……何かの引換券。
『……浴衣?』
「はいー、3階の浴衣売り場でお好きなもの2着と引き換えてくださいねー」
ということは……浴衣がタダで貰える……?しかも2着?!
『本当にすごい!じゃあ早く行こ!』
「めんどくせぇ。待ってるから行ってこい」
『選べるんだよ?!一緒に選ぼうよ!』
「……」
『……行かないならピンクのやつ貰ってくるからね』
「チッ……」
舌打ちと大きなため息をついて歩き出したジンの後を追った。
『ねえ、これは?』
「却下」
『じゃあこっち?』
「却下」
『もう……ちょっとは自分でも見てよ』
「適当に選べばいいだろ」
『全部却下するじゃない』
言われたお店に来たはいいものの、ジンは自分で手に取ることはせず、そのくせに私が選んだもの全部却下。私のものも決めてないし……。
「……1番地味な……黒地のやつならいい」
『わかった。でも、一緒に見よ?』
ジンの手をそっと握って引くと、諦めたように着いてきた。そして、黒地に少しだけ白い筋が入ってるものを選んだ。一応サイズを見るために羽織ってもらう。
『……』
「……目がうるせえ」
『地味な方がいいね。顔がいいから……うん、似合う』
「……そうかよ」
ふいっと顔を逸らしながらそう言った。
『じゃあ次私のね!』
女性用の浴衣がズラっと並んだ方へ向かう。何も言わなくてもジンは着いてきてくれる。
何色にしよう……迷う……。
「……これでいいだろ」
ジンが指さしたのは黒地の浴衣。白や赤の模様が入っている分、ジンのものより華やかな感じがある。
『うん、これにする』
「……いいのか?」
『ジンが選んでくれたし、模様も綺麗だし、これがいい』
お店の人にそう伝えると、それぞれに似合う帯もつけてくれた。めちゃめちゃ太っ腹……。
それらが入った大きな袋はジンが持ってくれた。
『付き合ってくれてありがと』
「……ああ」