第1章 Mistake
「なんでこんな事に…」
私はとにかく焦っていた。
今溢れた言葉は誰の耳にも届いていない。
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「お先に失礼します」
毎度毎度めんどうな打ち上げも早々に切り上げ、自宅に帰るつもりだった。
早朝からの収録で疲労困憊の身体はタクシーに乗るとすぐに睡魔に襲われていく…
車のゆれが気持ち良くて少しだけ眠りについた
「さん、起きて下さい」
マネージャーの声で起こされ、
もう家?やけに早いななんて思って窓の外を見ると
「は…?なんでホテルなの?私帰りたいんだけど」
明らかに私の家では無い、高級ホテルのエントランスに車をつけていた。
とにかく家に帰ってゆっくりシャワーを浴びてこの前買い替えたばかりの高級マットレスで疲れを癒したいのに
ほんとに使えないマネジャー…
マネージャーはすみません、大事な方がさんをお待ちしてると先程事務所から連絡がありまして〜
なんて言うから余計に疲れてくる
このままタクシーに乗っていても動く気配もなく、渋々ホテルのゲートをくぐった。
足取りは重く、私がここいにいると誰にも気づかれないよう髪で顔を隠し俯きながら歩く
マネジャーはスマホを確認しながらエレベーターへ私を先に乗せると明らかに気まずい表情で私を伺い見た。
目が合うと今の状況がおかしいと言うことに気が付き寝起きの頭をフル回転させる、私に会いたいと言ってる人物がロビーで待っていたり、はたまた最上階の会員制のバーにいるならわかる
点灯した階層は客室のみが入ってるフロアーだ…
「ちょっと待って、おかしいでしょ」
「社長から直々の指示でして…」
「ねぇ、おかしいよね!?これって枕営業じゃないの?私絶対にしないって、死んでも嫌だって言ったよね!?私と何年仕事やってるの!?」
ありえない、こんなのありえない、14歳にしてジュニアアイドルとしてグラビア界で鮮烈デビューを果たし特撮のヒロイン役を射止め、有名雑誌の専属モデルも経験して今やTVで見ない日は無い頂点を極めた女優の私が
ここまでたどり着くのに全て自分の力で手に入れたのに
枕営業なんかしなくても全て私の実力なのに…今更こんな汚い手を使ってまで欲しい仕事なんて存在しない。
私は全てを手にしてるんだから。
「帰る」