第26章 勧誘は彼女の笑顔と共に
あの日から、1週間。
「エース!今日はエースがとってくれた魚を煮てみましたっどう?」
どう?美味しい?
ニコニコと笑いながら味を聞く目の前で肘をつくユキを見る。
「お!こりゃ美味ぇ!!ユキはほんと、料理つくんのうめぇなぁ」
いや〜と照れるユキは、嬉しそうに自分の分にも手をつけ始める。
ん〜美味しいっ!と言いながら魚さんありがとう、などと呟くユキは、初めて会った時のような悲しみをその瞳に映していなかった。
あの夜、泣き疲れエースの腕の中で寝てしまったユキを古屋に運び、エースも眠りについた。
そして何やらいい匂いがすると思い目を開けると、そこには今まで見せたことのないような楽しそうな笑顔があり、最初エースは別人と一緒にいるような錯覚に陥った。
何せ、昨日まで笑顔も見せず、エースに懐くこともなく、悲しみに打ちひしがれていた女が、その顔を笑顔に変え朝食まで準備していたのだ。
弟の死を乗り越えるためには、かなりの時間が必要であろうと思っていたエースは、まさに鳩が豆鉄砲を喰らったかのようにその目を丸くした。
それがおかしかったのか、クスクスと笑うのは間違いなくユキで。
その目が泣き腫らしたことで赤く腫れているのに気づき、無理してんなぁと心の中でため息をつくエースは目の前にあるその小さな頭をぐりぐりと撫でる。