第3章 消えた女
「・・・あの女、いきなり俺に抱きついて、こう言いやがったんだ『サッチさん!!!会えてよかった!!!!』ってな」
「・・・?知り合いかぃ?」
「いや・・・・全く知らねぇ。会ったことも無い女だった。・・・エースから聞いてた密航者はお前か、って聞いたんだがよ、なんかこう、密航者っぽくなかったっていうか」
歯切れ悪くそう言うサッチに、マルコの眉間に皺が寄る。
「密航者じゃねぇんなら、なんだってんだぃ?」
「・・・・・死に別れた、誰かと会ったみてぇな?」
ぽつりと、エースがその女を思い出しながらこぼすと、サッチはハッとした感じで、そう!それだまさしく!と同意してきた。
「・・・エースに会った時もそんな感じだったのか?」
「あぁ、、、なんか、俺もいきなり抱きつかれて、泣かれた。・・・・・敵襲に、俺も行かなきゃと思って、部屋で待っててくれって言ったら、いきなりキスしてきて、『私も愛してる』って言われた」
「「はあ!?」」
一同がさっきよりもざわめいた。
そこに目を丸くしたサッチまでもが、キスされて愛してるとまで言われただと!?お前、あんな美人にそんなことされたのかよ!!!!
とテンション高く言われたので今度はエースがサッチに聞き返した。
「お前は何もされてねぇのか?」
「されてねえよ!!俺には、ただ抱きついてきて、その後『また会えるようにするから』って言われておしまい。すぐに目の前から消えちまった」
くっそーー!!なんで俺には愛のキスしてくれなかったんだあぁぁぁ!とその場で泣き崩れるサッチを横目に、エースは気になった言葉を、嫌な予感がしながらも反芻した。
「消えた?」
「・・・・・あ、あぁ。なんか、こう、スーって透明になっていって、その後どこからも・・・・気配すらも無くなった、ん、だけど、よ・・・・え?あれ?これって、まさか・・・・」
段々と、青くなりながらそう紡ぐサッチ。
エースも、周りにいた奴らもそれを聞いて寒気を感じ、お互いの顔を見る。当事者のエースとサッチなんて真っ青だ。まるでその場の温度が10度くらい一気に下がったかのような寒気の中、1人冷静なマルコが口を開いた。