第19章 彼の心配事
しんしんと雨音の鳴り響く古屋の中、エースは1人先程のユキの様子を考えていた。
慈愛に満ちた顔で弟のことを話すユキは、姉で、母のようであった。エースの周りは男ばかりで、そんな人間はいなかったので、自分よりも年下の女がそんな表情をしたことに驚いた。
しかし、同じ弟を持つ者同士として、ユキの話は微笑ましかった。ルフィとは大違いだな、と思いながら、ユキの弟の話を聞いていた。
だからこそ、なぜユキが言葉を切ったのか、1人になりたかったのか、よく分かるのだ。分かるからこそ、そっとしておこう、そう思いエースは止めなかった。
夜の森が危ないことも、雨が降っていることも知っている。それでも、エースのいる、誰かのいる場所ではうまく泣けない、そういう類の人間だと、なんとなく気づいていたから。
「・・・・・さすが姉弟だな、よく似てやがる。」
話に聞く、姉の前では泣かなかった弟を思い出し、苦笑する。追いかける気は毛頭ないエースは、椅子に座ったまま寝ようと机に突っ伏した。
が、目を閉じても浮かんでくるのは先程の、言葉を切るユキの表情。
どことなく生気のなくなった瞳が忘れられず、エースは項垂れた。あーーー、と言葉にならないうめき声をあげるエース。
「____あんな顔されちゃ、心配になるだろ・・・・くそっ」
そうぼやくエースは、ガタリと立ち上がり、ドアノブを回す。