第11章 辿り着いた島
ここは、何もない島。『スイレン島』。太陽がのぼり、容赦無くその光を島全体に浴びせている。その浜辺に打ち上げられた2つの影。
「・・・・・ん」
1つの影がピクリと動き、起き上がったかと思うばすぐにそのまま肺に溜まった海水を吐き出した。ゲホッゲホッと海水を出すと、すぐに周りを見渡すその男、エース。
・・・・・浜辺?そうか、昨日の波に飲まれてここまで流されたのか。
命拾いしたことに胸を撫で下ろす。相当悪運が強かったらしいな。と思いながらも、打ち上げられなかったら最悪今頃は海の藻屑となっていたであろう。
そもそも、こんなことになった元凶である主を確認し、波に飲まれてからも己がしっかりと抱きしめていたことにホッと安堵しなが、その小さな体を揺さぶる。
しかし、いくら揺すっても反応のないことにだんだんとエースは焦り、すぐに救命処置を施す。
胸を押さえ、空気を送り込み、息をさせる。その繰り返しを何度か行うと、ゲホッと先ほどのエース同様、水を吐き出した。
未だ意識は戻らないようだが、ひとまずは大丈夫だろうと安心したエースはその場で項垂れた。
「・・・つーか、まじでここ、どこだ」
海へ出てから2回目の遭難に、エースはなんでこんなことに、と昨夜の嵐はなんだったのだというくらいに天気のいい太陽を仰いだ。
幸い、この島は初めて遭難したときとは違い、さまざまな果実も、湖も、動物たちもいる。食料や飲料に苦しむことはないだろう。
ただ、1つ困ることといえば、人が誰もいないということであった。1つでも村があれば、そこに住む人々に船を借りるなりなんなりできたのだが・・・
こりゃ、一から船を作るべきか?
前途多難だな、と遠い目をしたエースは、近くにあった果実をむしり、口へ運ぶ。
「っお!うまいな、なんの実だ?」
食べられるものがあることに感謝し、茂る森の奥へと足を進めた。後ろには、小舟の主を乗せたまま。