第8章 その正体
「・・・そうは言うがねぃ、俺か、そこのエースにだけは少し事情を話してもらいたいんだよぃ。・・・・この船に乗せるにはねぃ」
「・・・・この船にご迷惑はかけません。小舟を1つ貸していただければ、1人で次の島にいけますから。」
さっきとは違う、丁寧な口調に、ああ、本来はこっちなのかと自然に納得する。
「流石に、お前みたいなガキを1人放って置く気はねぇぞ」
そうきっぱりと言うエースに、チラリとその女は視線を寄こし、少し不貞腐れたように呟く。
「もう18です」
「「なっ!?」」
これには、流石のマルコも驚いた。まさか、エースと1つしか変わらないとは思いもよらず、ふと口が滑った。
「いやぁ、世の中まだまだ不思議なもんだ」
感心すらするほどに、その女は若く見えた。
「とにかく、18でも十分若ぇ。さらに女だ。そんなの、オヤジが許さねぇよぃ」
「・・・・・白ひげ、という人は、そんなに優しい方なんですか」
ぽつりとそうこぼした女は、誰かへ答えを求めている様子ではなく、何か考え込んでいるようだった。
「・・・・・とにかく、俺はお前が生きていける街を探すって約束した。だから、俺が安心してお前を置いておける街を見つけるまで、ここにいろ。いいよな、マルコ?」
「ああ。オヤジには言っておくよぃ」
「・・・・・・・・・すみません」
何か言いたげにしたが、結局何も言わずに頭を下げるそいつ。そーいえば・・・・
「お前、名前は?俺はエース、ポートガス・D・エースだ!」
「・・・・」
「俺はマルコ。できれば本名を教えてもらいたいが、無理なら男としての名でもいいよぃ」
何か迷いのある顔をしていたからか、マルコがそう伝えると、そいつも名乗り始めた。
「・・・・『ユウ』です。男として、みてください」
本名ではない、と言うのはすぐにわかったが、まぁ気にしない。誰しも抱えてるもんくらいある。じっとまっすぐにエースの瞳を見つめる、『ユウ』と名乗ったそいつの頭にポンっと手を乗っける。
「よろしくな、『ユウ』!」
「っ!・・・」
にっこりと笑顔を見せると、その目が大きく見開かれる。
何も聞かずその名で呼ぶエースに驚いたのか、その行為に驚いたのかはわからないが、少し身を引きながらもハイと呟く姿に、懐かねぇもんだな、と苦笑する。