第2章 知らない女
カンカンカンカン、と警鐘のなる音がする。
いつもなら自室で太陽が登りきるまで眠り続けるが、この音と共に、仲間たちの雄叫びが聞こえてくると、さすがに目を覚ます男。
外で起きている騒ぎが、すぐに敵襲だと気づき寝起きにも関わらずバッと身体を起こした。と、その瞬間。
バンッと大きな音を立てて開く自室のドア。
隊長である自分のドアをノックもなしに開けるやつなどいない。つまり、敵だ、と入ってきた影を臨戦態勢で睨めつける。何者だ?どうしてここまで入られた?仲間たちは無事か?そう逡巡しながらも、煙に隠れた影を見失わないようにする。もくもくとした煙が少しずつ消えていくにつれ、その影がうっすらと人型になっていく。
・・・?かなり小さいな
どんなガタイのいい男かと思ったら、かなり小さな影を前に、どういうことだ?こんなとこにガキでもいんのか?疑問に思いながらも、ここは何が起きても不思議でない海の上、グランドラインだ。油断せずじっとその影が動くのを待っている。
「・・・ス?」
「・・・・・・あ?」
聞こえてきた微かな声に男は訝しげに反応する、と、突然煙の中からバッと飛び出してきた影に男は目を丸くする。
「エース!!!!!!」
そう言って飛びついてきた者の正体を、一瞬だけ捉えることができたエースは、避けるべきか一瞬悩むが、何よりその正体に固まり目を丸くした。
お、女!?!?!?!?
細くしなやかな腕がエースの首へと周り、ガッチリと抱きしめられる。否、抱きつかれる、の方が正しい表現だ。
エースは全くもって面識のない、初対面の女に抱きつかれ、困惑したが、今船が敵襲を受けてることを思い出し、すぐにその女をひっぺがそうと女の首もとに手を掛けた瞬間。
ぐす、と鼻を啜る音が聞こえ、エースの手は止まった。