第33章 コック
『この船にあいつを乗せること、それが何を意味するのか分かってる。けど、あいつはこれから世界政府に狙われ続ける。俺は、あいつを傷つけるもの全てから、あいつを守ってやりてェんだ・・・・もう、あいつに辛ェ思いをさせたくねェ。
あいつと過ごした1週間で、俺はユキって女を知った。あいつがこれまで、弟のためにその身を捧げていたことも、弟のために天竜人を殺したのも・・・あいつが、弟のために前を向いて生きていくと決めたのも、全部見てきた・・・・・俺は、少しでもいい、あいつが自分のために笑って生きていけるようにしてやりてェんだ』
だから、頼む
そう言って深く下げられた頭に、白ひげは一つの沈黙を落とした。そうして目を合わせた2人の長男の視線に、ニッと口角を上げてエースの頭を上げさせる。
「バカ息子の頼みを聞かねぇ親がどこにいる」
「!オヤジ・・!!」
「それにもう、お前ェも手ェ出しちまってんだろ?」
その言葉に罰の悪そうな顔で謝罪を述べるエースに、白ひげは大きく笑い声を上げた。
「あいつらを気にくわねェと思ってるのは、お前ェだけじゃねェ。あの娘っ子が奴隷だったと言うなら、これからこの船で自由ってやつを教えてやろうぜ、息子よ」
「・・・・・・オヤジ」
「なぁマルコ、サッチ、おまえらは異存、あるか?」
そう言って向けられる二つの視線に、マルコとサッチは挑戦的な笑みを浮かべた。
「ねぇよぃ」
「右に同じく」
その笑みは、さながら海軍だろうと天竜人だろうとかかってこい、と示唆しているようで、エースはその口角を釣り上げた。
「あいつを狙う奴ら全部、俺がぶっ潰してやる」
自身らと同じような挑戦的な笑みを浮かべたエースは、この白ひげ海賊団にいること事態が彼女を政府から守ることを知っているのだろう。政府は、この船に安易には手を出すことはできない。だからこそ、彼女の乗船を許可してくれた白ひげに、長男たちに、エースは笑顔で感謝を述べた。