第33章 コック
「サッチさん!皮むき終わりました!ついでに洗いました!次は切ります?」
「え!・・・じゃあお願いしちゃう!」
「サッチさん!終わりました!次は?」
「・・・・ユキちゃん・・・・なんていい子っ」
そのテキパキとした手際に感激する、4番隊隊長。宴から3日間、火傷の熱が引くまでは絶対安静を言いつけられたユキは、ずっと暇だ暇だと、早く何かしたいと、寝ている時間が惜しいとその頬を膨らませてきた。終いには具合を見に来たマルコに直談判し、職を得たユキは、その次の日から元気に働き出した。
宴の場で意気投合したユキは、コックであるサッチに朝早くから弟子入りを申し出て、それを快く引き受けたサッチによりユキの所属は4番隊へととんとん拍子に決まっていった。
エースが何もしなくても自分から船に溶け込もうとするユキに、少し面白くなさそうなエースは不貞腐れながらも、楽しそうにサッチと料理をするユキを眺めた。
「・・・・・サッチに取られちまったねぃ」
「うるせェ・・・・」
「・・・・」
「・・・あいつが楽しそうなら、それでいい」
元々料理が好きで、無人島でもずっとその料理スキルを披露していたユキ。海賊の世界、コックは常に人員不足な中、即戦力になるユキにサッチは大喜びだ。
船での所属はエースのいる2番隊か、マルコのいる1番隊、もしくはサッチのいる4番隊と決めてはいたので、結果的にはいいことなのだが。
何せコックは忙しい。1600人以上のクルーを乗せるこの船での食事は、朝早くから夜遅くと、たまにデザートを求める者や、食いっぱぐれた奴のためにも、一日中と言っていいほどキッチンにいる。隊長であるサッチはそれこそ毎日食堂にいる。とは言え当番もあるため、自由時間もある。
それでもエースと共に過ごす時間が極端に少なくなることには代わりない。そのことに拗ねている末弟にマルコは苦笑する。