第29章 部屋
「・・・・そうか、まさかオヤジにまで会ってたとはな・・・オヤジは、覚えてねぇのかな?」
「・・・さぁ、どうだろう。あの頃は私、少ししか話せなかったの。けど・・・・すごく優しくて家族想いなのは知ってる」
「あぁ・・・俺の尊敬する男だ」
ニッと笑うエースの顔は、父親を褒められ嬉しそうに頬を緩めていた。それが可愛く思え、ユキはつい、思わずその癖っ毛の黒い髪の毛に手を伸ばした。
ピシッと固まるエースに、ユキはふわふわだ、とその髪を撫でる。しばらくその感触を楽しむユキはガシッとその腕を捕まれびっくりする
。撫でていた髪の下から、鋭い眼光が見え、怒らせたかと思い固まった。
「・・・お前な、あんまり煽るな」
「?」
意味が分からずに首を傾げるユキに、はぁとため息を吐くエースは呆れ顔のまま、立ち上がる。
「ここで体を少し休めてな、また呼びにくる」
ぽんぽんとユキの頭に手を置き出て行くエースは、そのまま廊下へ出て行く。
確かに、少し疲れた。思っていたよりも気を張っていたみたいで、ベットに横になるとすぐに眠気に襲われ、そのまま睡魔に呑まれた。