第2章 ー夢でみる私?
「……もうすぐだから……クレアなら…きっと…。」
久しぶりに夢をみた。
次期当主であった兄、マクシミリアンが亡くなってからというものの1度も夢なんてみることが出来なかったのに…。
私、カレンディア・カレンディアは伯爵家の長女であり、次期当主である。まだ、女性が爵位を持つなどということが大変珍しいこの時代、社交界では常に良くも悪くも話題の中心となっていた。
先程の夢は、私が10歳頃から時々見る美しい女性の声が語りかけてくるものである。
いつもはただ泣いていたり、「もうすぐだから…」と、ぼんやり語りかけてくるだけなのだが、今日の夢はやけに鮮明だった。泣きながら…でも何処と無く喜びの感じられるあの表情…。あの、美しくなびく紫色の髪の女性は一体誰なのか…。
ー数日後
私は、とある仕事のためにファントムハイヴ領を訪れていた。最後に訪れたのは、兄に連れられて行った舞踏会だろうか。
「ようこそいらっしゃいました…カレンディア・カレンディア様。」
この屋敷の執事であるセバスチャンに連れられ、私は地下のビリヤード室に案内された。
もう既に仕事仲間達が数人案内されており、ファントムハイヴ伯爵が挨拶をしようと近づいてきた。
「ようこそいらっしゃいました。ファントムハイヴ家当主、シエル・ファントムハイヴと申します。以後、よろしく。」
「ご挨拶ありがとうございます。本日、当主代理として参りました。カレンディア・カレンディアと申します。皆様もどうぞよろしくお願い致します。」
挨拶が終わると、ファントムハイヴ伯爵が話題について話し始めた。
「最近、女性を狙った斬殺事件が多数発生している。ヤードも日夜、血眼になって犯人を捜索しているようだがどうにも手こずっているようだ…。」
「それはそれは…。困ったねぇ…。」
と、ビリヤード台に腰掛けていた劉と名乗る男性が話し始めた。
「最近は、美しい女性ばかりが狙われているというじゃないか…。そう考えると、そこの貴方も狙われてしまうかもしれないねぇ……。」
……コホンッ
「それについては、僕も危惧している。だが、彼女の兄いわく、彼女は政治的な才能だけでなく、剣の腕前もなかなかだそうだぞ?劉。」