第7章 先手=松野千冬
がバタバタと自分の部屋に戻って行くのをポカンとした顔で見送った場地は千冬にクルっと向き直った
「うしっそろそろ行くか」
湯呑みに入っているお茶をぐいっと飲み干せば 場地はスクっと立ち上がり着替えを用意しだした
「はいっ!お供します!あ、でも一虎くんが…」
チラリと見遣った先には気持ちよさそうに大の字になって寝ている一虎の姿があった
「ほっとけ、そのうち起きるだろーよ」
いつもの事だというような顔をして部屋の玄関へ足を進めた場地に千冬は慌てて後を追った
大浴場へと足を運んだ2人は仲良く並んで湯船に肩まで浸かった
「ふぃ〜…やっぱ広い風呂はいいな」
「そうですね 場地さんっ」
場地の言葉に同意する千冬を場地はじっと見つめた
「な…何か変ですか?俺」
無言で見つめてくる場地に千冬は首を傾げると場地はゆっくりと口を開いた
「お前 どうすんだよ」
「へっ!?場地さん急に何ですか!?」
いきなり振られた言葉にキョトンとした顔を向ける千冬に場地は軽くバシャっと顔にお湯をかけた
「わっぷ!何するんすかっ!」
「俺らが気が付かねーとでも思ってんの?」
「気が付かないって…あ…」
場地の言葉に途中で気がついたように言葉に詰まる千冬にニッと場地は笑った
「…いつから気が付いてたんですか?」
「あ〜…結構前かな 千冬無意識にの事見すぎ」
「えっ!?俺そんなに見てました?!」
場地からの指摘で初めて自分がを見過ぎな事に気が付いた
「うっわ 恥ず…」
思わずブクブクと口元まで湯に沈む千冬を見て場地は楽しそうに笑った
「俺はお前らがくっついてくれたら こんなに嬉しい事はねーんだけどな」
「場地さん…」
独り言の様に呟く場地の言葉に千冬は「でも俺、見てるだけでいいんです」と返した
「は?何で」
予想外の事に場地は驚いた顔を向けた
「だって俺 場地さんみたいにカッケェ男じゃないし 一虎くんみたいにイケメンじゃないし それにほら、年下だし…」
段々と自分で言って声に力がなくなっていく千冬を見て場地はあきれたように小さくため息をついた