第2章 マンション
.
大野くんの部屋は最上階の一番奥にあった
「松本くんってのは、余程お金持ちらしいね」
俺はぶつぶつ独り言を言いながら、部屋のドアを開けた
玄関に入って、大野くんを床に座らせて、靴を脱がす
手探りで部屋の灯りを点ける
明るくなって目に飛び込んできた部屋の中は
ガランとしていて、何だか生活感がなかった
(……随分シンプルだなぁ……)
何て思いながら
俺は、また君を脇に抱えて歩こうとしたものの
眠ってしまって正体のない大野くんは、すぐに、くにゃんとなってしまって、上手くいかない
仕方なく俺は、大野くんを両腕に抱きかかえて“お姫様だっこ”をした
「……////」
君の柔らかな髪が、俺の頬を擽る
君の甘い香…
閉じた瞳に少し濡れた長い睫毛が揺れている
酔って紅く上気した頬…
誘うように少し開いた艶めく唇
俄かに蘇る、右のポッケの柔らかいお尻の感触…
(っっ駄目だ駄目だ見ちゃ駄目だっっ!!しっかりしろ、俺っ!頑張れ、俺っっ!!)
悶絶しながら、奥の寝室と思しき部屋へ
「でかっ!!///」
其処には、部屋の中央に鎮座する、キングサイズのベッドが…
(…神様……俺を試さないで……(泣))
俺は、自分の腕の中で眠る君の可愛い寝顔と
一人には大き過ぎるベッドを見ないようにしながら部屋に入って行った
大野くんをそっとベッドに寝かせる
…起きる気配は無い
「良しっ…と」
細い背中からゆっくり腕を抜く
と
手が抜ける瞬間、君の綺麗な指が俺のそれを絡めて掴んだ
「Σえっ!?///」
慌て指を解こうとするものの、しっかり握って放さない
「……行かないで……潤くん……行っちゃいやだ…」
「……!!」
君の頬を一筋の涙が伝う
「……行っちゃ……いや……」
俺はもう片方の手で、繋がれた君の手を優しく握って囁いた
「…何処にも行かない…ずっと…傍にいるから…」
「……」
大野くんは安心したように一つ大きく息をつくと
そのまま、深い眠りに落ちて行った
.
.