第15章 始まりの過去1
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「智ぃ、このポスターの青、もうちょい変えたいんだけど」
高校でバイトを初めてから数ヶ月
学校に馴染んで来たのは良いんだけど
松本くんは相変わらず、四六時中僕の後を追いかけまわして
オマケに最近では、“智”呼ばわり
…僕、一応先生だよ?
「“大野先生”でしょ!」
僕がむくれると、松本くんは二ヤリと笑った
「いいじゃん、三つしか年違わねぇし、“智”の方が、“俺の”って感じじゃん?」
「…誰が、俺のだよ…僕、彼氏いるって言わなかったっけ?」
「大学教授のジイサンだろ?俺のが良いぜ、ピチピチだし」
「バカ言わないでよ!はい、色見本」
僕はチョット乱暴に、色見本帳を松本くんの手に押しつけた
色見本帳を受け取りながら、松本くんが僕の顔をマジマジと覗きこむ
「…智の唇ってさ、超柔らかそうだよね」
「///ななな何だよ急にっ!!」
顔が熱い
「智、顔真っ赤…可愛いね」
「おっ大人をからかうんじゃありません!///」
「からかってないよ」
松本くんが急に真顔になる
「智は可愛いし、綺麗だし…色っぽい」
「////ややややめてよっ!!」
「…ほら、そうやって…ホントは判っててわざと俺を煽ってるんじゃないの?」
「/////ばっ…ばか言うなよっ!」
(もうっ!顔から火が出そう…)
どうしようもなく恥ずかしくて、真っ赤になってしまった自分を持て余して居たら
松本くんが、ぼそりと言った
「…我慢の限界」
「えっ?あっ…」
いきなり顎を掴まれたと思ったら
ちゅっ……って、カワイイ音を立てて
彼の唇が、淡い感触を残して僕の唇から離れて行った
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