第14章 傷痕
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—purururu...purururu...
『…もしもし』
聞き慣れた声
不意にその後ろから声が聞こえる
『…こんな時間に電話?…だれ?』
聞いた事の無い、女の人の声
『悪い…起こした?あっちで話すわ』
聞いた事ナイ慈愛に満ちた声…
『いいわよここで…私、寝てるから』
「……ッ」
プッ……ッーッーッー…
…初めて聞いた
多分今のは
“奥さん”の声
涙が勝手に溢れ出す
僕は崩れる様にその場に座り込んだ
「…何してんだろ…僕…」
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だだっ広い部屋に
僕のすすり泣く声だけが響いていた
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