第10章 予感(にのあい)
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(…俺の、せいかな…)
俺は、手の中の携帯を茫然と見つめた
(…俺が、余計な事言ったから…)
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“智の様子がおかしい”
それは、級友からの久しぶりの電話だった
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「…え?」
『だから、どうも最近、智の様子がおかしいんだ』
電話の向こうで、潤君が珍しくちょっと焦った様な声を出した
「あんたが子供なんてつくるからじゃない?」
俺は意地悪く言った
『…ま、俺も最初はそのせいだと思ったんだけどな
どうもそれだけじゃ無い気がするんだよ
ニノ、何か聞いてないか?』
あのプライドが高い潤くんが、わざわざ訊いてくるんだから
よっぽど様子がおかしいんだろう
「さあね、心当たりないなぁ」
なんちゃって、実はがっつりあった
だけどまさか
あんたのいない間に俺が大野くん嗾けて他の男と浮気してますよ〜
……なんて言えない
『…俺に、抱かれるのが嫌らしい』
「…へ?」
『どうも、身体の関係を拒むんだ
こっちは、ほんのたまにしか会えないから直ぐにでも愛したいのに
やれ、今日は気分じゃないとか、調子が悪いとか…』
「……(マジかよ(汗))」
櫻井さんと時々逢ってるってのは、大野くんから聞いて知っていた
雅紀のとこにも、ちょこちょこ二人で顔出してるみたいだったし
でも、それはあくまで、潤くんがいない寂しさを紛らわせる為であって…
…まさか、あの、撫で肩のヘタレ君が?!(←酷いから(笑))
『…お前何か隠してない?』
ギクッ…
「ばか言うなよ!大体身から出た錆ってやつだろ?自業自得なの!愛想尽かされても文句言えないぞ」
『……』
ヤバい…言い過ぎたかな
『……籠の鳥は』
「…え?」
『…一度飼い馴らされた鳥は、二度と空に戻れない』
「…潤君…?」
『…鳥籠を離れては、生きて行けない…』
「……」
背中を冷たい汗が伝う
『……放たれた鳥に待っているのは、自由じゃなくて……』
俺は、ごくりと唾を飲んだ
『……破滅だよ』
低く響く潤くんの声に
暗い欲情を見た気がした
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……どうしよう…俺……
……後戻しの出来ない事、しちゃったの……?
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