第10章 予感(にのあい)
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「ただいまってば!」
いきなり雅紀のデカイ声が耳に響く
「なんだよっもうっ!!いきなりびっくりすんだろっ!!」
俺は耳を押さえて抗議の声を上げた
「イキナリじゃないよ、いくらただいまっていっても、カベにむかってブツブツいってるからさ」
「ぶつぶつなんて、言ってないもん///」
雅紀はにっこり笑うと、後ろから俺を抱きしめた
「どした?なんかあったの?」
「う…」
雅紀はいつも優しい
俺は、彼が怒っているところを見たことが無い
俺が何を言っても、何をしても、ふんわり笑って包んでくれる…
「俺どうしよう…大変な事しちゃったかもしれない…」
「おーのくんのこと?」
「…なんで解んのさ」
あんた、超能力者ですか?!
「そりゃワカルよ、何年一緒にいると思ってるの?いしんでんしんってやつ」
(今、絶対、以心伝心ってひらがなだったな)
俺は今までの経緯を全て話した
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「やっぱ、まずかったかな…」
雅紀はちょっと考えてから言った
「きっかけがどうあれ、実際ふみだすかどうかは、本人次第でしょ?」
「…そりゃあ」
そうだけど…
「きっとそれまでに、見えないキレツが、二人の間に出来てたんだと思うな」
「……」
「それはおーのくんの中で、ちょっとシタことで壊れてしまうくらい大きくなってたんじゃないかな?」
そうか…考えてみたら、自分がずっと一緒にいたのに
“恋人”から“愛人”になっちゃったんだもんね…
(俺だったら耐えられない)
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