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—L'Oiseau Bleu— 青い鳥

第7章 罪


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「…………ふう」


俺は、椅子に深く沈みこんで大きな溜息をついた


(……智……大丈夫かな……)


大丈夫な訳などない

きっとまた泣かせてしまった

…俺の、大事な恋人のお前を…


「…………はぁ」


その愛しい恋人の顔を、俺はもう三カ月も見ていなかった


(……そりゃ、溜め息だって出るさ)


だが

どんなに愚痴っぽく溜め息をついた所で

逢いに行きたくても状況がそれを許さなかった


逢いたい気持ちばかりが、ジリジリと疼く


「ごめんな、智」


俺は、デスクの引き出しから古い写真を取り出した


それは、初めて出会った頃の智の写真だった

俺のお気に入りの、長く美しい指が絵筆を掴む瞬間の写真…


「智…ごめん」


『僕の事は気にしないで…その代わり、次逢う時もいっぱい愛して』


暫く逢えないと告げた夜、自分を狂ったように抱いた俺に

智は、消えそうな意識のなかでそう言った


「…………」


(何故…何時も…俺を許す…?


お前を裏切って尚、繋ぎ留める俺を

お前を傷つけ悲しませて迄、縛り続ける俺を…)


「…………ふっ」


(…解ってる…きっとお前は…怖いんだろう…

…俺が、また…)


—pururu...pururu...


愚かな自分と、哀れな智に想いを馳せていたら

デスクの上の電話が鳴り出した


何となく、嫌な予感がするのを押し殺して電話を取る


「……何だ」

『奥様からお電話です』

「…………そうか、……繋げ」

『はい』

「……………」


俺は

写真が仕舞ってあった引き出しを開けた


(………智………ごめん………


………ごめんな………)


いくら写真に謝ってもどうにもならないのに

俺は、心の中で智に何度も謝りながら


俺の一番大事な恋人の写真を

そっと、引き出しの中に仕舞った


.


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