第10章 灯る灯火
コピーを終え、ポスターも一緒に持ち受付へ戻ると
「やばい柏木さん!昨日のイケメンが今日もいるの!2日も連続で見れるなんて嬉しすぎ!」
と、先輩は興奮気味に言ってきた。
「へぇ。よかったですね」
「もう!相変わらずそういうのに興味がないんだから!凄いイケメンだから柏木さんも見てよ!」
私はガラスドアに貼るポスターの4つ角にマスキングテープを貼りながら
「これ貼り終わったら見るので待ってくださいね」
と適当に返事を返す。
このポスターのデザイン素敵だな。
とポスターを見つめながらガラスドアの方へ向かい、少しも曲がらないよう良く左右の高さを見比べながら貼る場所に狙いを定める。
「ねぇ、柏木さん」
「なんですか…ちょっと斜めってますかね?」
「そうじゃなくて…あのイケメン、柏木さんのことすごく見てるみたいだけど知り合いか何か?」
先輩のその言葉に”私にイケメンの知り合いなんていたっけ?”と思いながら、ポスターで隠れていた向こう側を見るために首をヒョイと傾けた。
「…っ!!!」
そこにいたのは杏寿郎さんだった。
なんでここに杏寿郎さんが…?
バッチリと目が合い、完全に動揺してしまった私は、手が震えてしまいまともにポスターを貼ることもできない。そんな私を見かねた先輩が
「柏木さん大丈夫?あのイケメンと何か訳ありな感じ?ここは私がやるから一旦トイレにでも行って落ち着きな」
「…はい。すみません…」
先輩の言葉に甘え、私はポスターを先輩に託し一旦トイレへと向かった。
どうしよう。なんで杏寿郎さんがいるの。千寿郎さんが喋った…?うぅん。千寿郎さんは約束を破ったりするような人じゃない。
一人になったものの、結局は動揺する心は収まる気配はない。いつまでも仕事を放棄するわけにはいかず、事務所に戻るとポスターを貼り終えた先輩もすでに戻って来ていた。
「彼、まだいるよ」
目があった先輩ににそういわれ、私はどうして良いかわからず自分のデスクに座る。
私が座ったその時、”コーンコーンコーン”と無情にも終業のチャイムが鳴った。
余計な残業はしてはいけない。その決まりに乗っ取り普段であれば終業のチャイムが鳴り終わったら荷物をまとめすぐに会社を出る。けれども私は、立ち上がることが出来ない。