第14章 夏 × 恋
外も室内も蒸し暑い季節。
もうすぐ夏休み、
迫るものといえばテストしかあるまい。
「いやぁあああっ....」
「うるさいなあー」
真横でネイルをする智凪。
最近、色気づいてる気がする。智凪。
「恋でもしてんの?智凪」
と当てずっぽうに言ってみると、
智凪は満面の笑みで
「してるよ」
と答えた。
「分かり易いね、現文の先生でしょ」
「えーっ、そこまで分かる〜?」
と嬉しそうに言う智凪の表情が
なんか無駄にムカつく。
「分かるよ、智凪って分かり易いから」
現文の先生、か....。
別に羨ましいとかない。
けど、けれど本当は
そういう風になれて凄いって思う。
「今日デートの約束してるの!
設定は親戚!どう?どう?イケるかな?」
「なくはないね」
喜んで話す智凪。
その姿を見て、つい笑ってしまう。
「なんで笑ってるの〜?!」
「可愛いなあって」
大野くんとの一件が落ち着いて以来、
和也は女遊びをやめた。
大野くんはいつも通り過ごしてる
平和な空気が流れてる今が、
なんだか楽しいような
「そう言えばさ、
愛里は好きな人とか居ないの?」
「...えーっ....と...」
藤瀬先生だなんて、言えるわけもない。
だって、私は臆病者。
智凪みたいに素直にはなれない