第9章 弱虫 × 強虫
強がって周りを心配させたくなくて。
だから俺はいつも笑う。
笑っちゃえば平気に見えるだろ?
泣き虫。
なんで泣くんだよ。
いつもは簡単に笑えるのに。
手が小さく震えてた
力が入んなくて、初めて怖いと気づいた。
坂城天琉。
中学も一緒だったからよく知ってた。
中学から美少女と騒がれてて、
笑顔がよく似合って気さくで優しい子。
そう、表向きはね。
俺は騙されたんだ
その優しさに。
思い通りにならないと癇癪起こすし、
周りを巻き込むし。
自己中心的でワガママな女の子。
あの長い黒髪を見る度に、
俺は苦しくなる。
あの日を思い出しそうになるから。
『智って、つまんないから』
こういうときってどうすんだっけ
泣くの止めるにはどうすんだっけ
わかんねえや、なんでかな
「智、飲み行くぞ」
「に、の....」
「泣くのは飲みに行ってからだ
そんときなら好きなだけ泣きなさいよ」
ちょっと照れてるニノの優しさに、
また泣きそうになる俺。
前にもこんなことあったっけ
「ほーら、早くするー」
「…うん」
傍にいるだけで、悲しくて。
一緒にいるだけで、つらくて。
なのに俺は好きだ。
何も変わってない彼女が、
あの瞬間から現れなければ。
何もかもそのままだったのに