第6章 喧嘩 × 気持ち
あのとき、愛里が泣いていた理由も
その原因のあるヤツも何もかもを、
俺は知っていた。
知っていたから、もの凄く悔しくて
辛くて苦しくて落ち込んだ。
叶わない恋なんてするもんじゃないって
そうアイツに言ってやりたかった
泣くほど辛いならやめろって。
それでも俺は言えなかったんだ。
俺、アイツにどんな言葉をかけてやれば
どんな風に励ましてやったら良かったのだろう。
俺じゃダメなのか?って、
そんなやつやめとけって、
そう言えば良かったのか?
違う。違うよ。
ぜんぜん違う。
「…意味わかんねぇっつうの……」
なんで藤瀬なんだ。
よりによって、なんで。
俺だったら答えてやれる。
チャラチャラしねえし、隠し事もしない
なあ、どうして。
もっと早くに気づいてやれなかったんだ
「待てよ!!」
俺に分かんねえってどういうことだよ
俺に分かんねえで他のヤツに分かんのかよ
ずっと一緒にいたっつーのに
俺には、分かんねえって事かよ…