【MARVEL】This is my selfishness
第7章 7th
「私たちで飲みましょっか!」
『え?』「は?」
う〜ん、と悩んだ末に出したロンさんの発言にわたしもルドルフさんも同時に聞き返した。
「少ししか変わらないけどせっかくだから従業員に1〜2本ずつ持って帰ってもらいましょ。皆お疲れ様〜いつも頑張ってくれてありがと〜の意味で!」
ニコッ!と音がつきそうなほど良い笑顔でロンさんが手を叩いた。
…結構な損失だと思うんだけど…ロンさん、いくら何でも太っ腹過ぎない?と思っていると、先程の良い笑顔からは打って変わって悪戯っ子のような顔をして、「キャストちゃんたちには特に頑張ってもらおうかしら。お客さんにボトル入れてもらうようにね!」とウィンクをする。
「そっちが主な【お疲れ様】だな?」
ルドルフさんが呆れ笑いのように言うと、ロンさんは茶目っ気たっぷりにケラケラと笑った。
話が纏まった所で、アレックスが出勤してきた。
この沢山のケースを見て、アレックスはすぐに状況を理解したようで、サァーッと青ざめたかと思うと、開口一番に「すみません!」と言って頭を下げた。
それをロンさんが「大丈夫。もう解決策は見つけたから」と優しく宥めて、アレックスに顔を上げさせる。
それでもアレックスはすぐには気持ちが切り替えられないようで、少し暗い顔のままだった。
『まだ気にしてる?』
お店を開けてから数時間後、休憩時間を終えてからアレックスに声を掛ける。
仕事が始まってからというもの、やはり気に掛かるのか、アレックスの表情はスッキリしないままだった。
「そりゃあ気にするよ…解決策を聞いたけど、結局は今のところマイナスだし…」
『たくさん注文が入れば大丈夫だよ。その為にわたし達も頑張ればいいんだし。ルドルフさんもスペシャルメニュー考えてくれたしね』
思いつくフォローを言ってみても、まだ本調子じゃなさそうな表情のまま。
仕方ない。奥の手を使おう。
『あのね、あまり言いたくないんだけど……』
「なに?」
『わたしもね、前失敗したことあるの』
「…どんな?」
『…お高いグラス割っちゃって…』
「お高いって…どれくらい?」
眉間に皺を寄せるアレックスに耳打ちした。