【MARVEL】This is my selfishness
第5章 5th
「ぅふふ、ミアちゃん、興味津々ね。今までこういうこと聞いてくること無かったのにどうしたの?」
『えっ?あ、いや、あの…』
「もしかして親切なお隣さんが関係してるのかしら」
スマホを弄るロンさんからチラリと大人な視線を受けた。
『そ、そんなことは…』
「まあいいわ。ほらコレ、私が使ってるのはここら辺よ。一応ユニセックスのものだから大丈夫だとは思うんだけど人それぞれ使用感度は違うから、私の使い掛けで良ければあげるわよ?」
『えっ!そこまでしてもらうのは…』
「良いのよぉ。どうせ無くなりかけてるものだから買い置きがあるし。後で渡すわね。あ、あとひとつで効果が何個もあるオイルやクリームもあるからいろいろ試してみても良いと思うわ」
『…ありがとうございます』
「恋する乙女の手助けが出来るならこれくらいお易い御用よ」
『え?』
「フフ、何でもないわ。そうだ、美容のことならケリーにも聞くと良いわよ。あの子も美容に気を使ってるから参考になるかも」
ケリーさんというのはお店で働くキャストさんの1人で一日に色んなお客さんに指名される人気の女性だ。
綺麗なブロンドの長髪を緩やかに巻いていて、一つ一つの仕草に色気があり肌も艶があって細やかで綺麗な人。
…ただあまり話したことは無い。
『そ、うですね…聞けたら聞いてみます…』
「あら、苦手?」
『…どうでしょう…?』
煮え切らないわたしに「意外と気さくな子だから大丈夫よ」とロンさんは励ましてくれた。
うっ…そう言われても綺麗な女性を前にすると口が開けないんだもん…。
いや、むしろ口は開くかも。見惚れちゃって…。
週の中日という事もあってお客さんの波は落ち着いている。
日付が変わる頃、カウンターに戻りながら一息つくとお店の出入口の扉が小さくカランコロンと音を立てて開いた。
音につられて出入口を見ると、バッキーが立っていた。
わたしと目が合って、目が優しく細められた。
「やあ」
『いらっしゃいませ』
出迎えて微笑むと、バッキーの口角が片方だけ上がる。