【MARVEL】This is my selfishness
第4章 4th
湯気が上がるマグカップに口をつけるとホッとする温かい甘さが広がる。
ココアなんていつぶりだろうか。
「甘いな」
『少しお砂糖混ぜたからね』
『クッキーもどうぞ』と差し出されたものを貰いながら、少し前の会話を思い出した。
「そういえば目を休ませるって言ってたが、どうかしたのか?」
マグカップを両手で包むように持っていたミアがこちらを見る。
『さっきまでずっと映画を観ててね、目が疲れちゃって』
「なるほど」
『バッキーは映画とか観る?』
「いや……前は観ていたが…」
洗脳されている時はいざ知らず、洗脳が解けてからもそういった娯楽にはあまり縁がなかった。
1945年代までしか分からない。
「観に行く縁もなくてな」
『今度観に来る?それとも何か映画館に観に行く?』
ミアの言葉に胸が少し騒いだ。
彼女は割と行動派というか…積極的というか。思ったことがすぐ口に出るタイプなのだろうか。
まさかそういった誘いを受けるとは。
「良いのか?」
『うん。映画とかドラマを観れるサブスク入れてるから一部だったら見放題だし、映画館で観るのも好きだし。1人で観るのも良いけど感想を言い合う相手が居たら楽しそうだしね』
ココアを飲みながら笑うミアの表情が少し寂しそうに見えた。
「誰かと観に行ったりしないのか?」
『ん〜〜…そういう人が居ないんだよねえ…。親もきょうだいも居ないし、友達も居ないし』
「そうなのか?」
意外だった。
大人しそうには見えるが、人付き合いも良さそうなのに。
『わたしはそんなつもり無かった…んだけど、今まで人に壁を作っちゃってたみたい』
「…君が?」
『うん。無意識に人と関わりすぎないようにしてたのかも』
「…信じられないな。むしろ警戒心と壁を作った方が良さそうなくらいだろ」
『え〜?』
もぐもぐとクッキーを咀嚼しているミアの目は少し微睡みそうになっていた。
「君はもう少し警戒心を持った方がいい」
『持ってる方だと思うけど…』
「持ってたらこんな怪しい奴とここでお茶会なんてしないだろ」
『…怪しい奴?』