【MARVEL】This is my selfishness
第3章 3rd
頑張って目を逸らさずに言うと、スッとバッキーの腕が伸びてきて眉間を親指でグリグリされた。
『?!』
「眉間にシワが寄ってるぞ」
ハッ、と眉間をさすってバッキーを見ると、いつもの優しい、ぎこちなさのない笑顔になっていた。
「随分長く寝てたんだな?俺は傷ついてたというのに」
まるで恭しい執事のように、自分の胸に手を当て項垂れて見せる。
そこから上目遣いのように視線を送ってこられた。
その言い方はずるい。冗談のように言ってるけど、傷つけてしまった可能性がゼロじゃない限り、わたしが悪い。
『ごめんなさい…』
素直に謝ると、仕事のために整えた頭をくしゃくしゃと撫で回された。
割と強めに。
撫で終わった頃には少しふらついた。
『整えたのに』
手櫛で整え直す。でも全然嫌じゃなかった。
「帰り、気をつけろよ」
『うん…行ってきます』
「ああ、行ってらっしゃい」
バッキーはわたしが階段を下りてエントランスを出るまで上から見送ってくれた。
ミアが出た後、柵に手をかけたままその場で考え込む。
気にしないで、とは言われたが気になってしまう。
あの時、突き放すような言い方をしていたのは怒っていたからではないか?では何故怒っていたのか。
その理由を考えれば考えるほど「もしかして」という気持ちが頭をもたげる。
あの時の俺はわざとミアではなく女性全員を対象にしたような言い方をした。
それに腹を立てたのでは無いかと。そしてそれに腹を立てたということは───────
思わず口元が緩む。
そして緩んだことに自分でも驚く。
しかし気にするな、と言われたのだから気にしないでおかなくては。
初々しく可愛らしい隣人をまた怒らせてしまう。
To be continued...