【MARVEL】This is my selfishness
第14章 12th
俺の頭を抱きしめていた腕から力が抜けていく。
起こさないように抱え直してアパートへ足を進める。
バイクはまだ回収されていないのを知らないふりをして。
ミアには悪いが、ゆっくりとだが確実に酒を飲んでいく彼女にやめておけと言いつつも強く止めなかったのはそのほうが酔って眠くなればこうやって俺が抱えれるからだ。
友人止まりの関係では触れるのに何かと理由が必要な気がして。その理由作りに活用させてもらった。
帰り道なら何からも邪魔されないと踏んで。
酔えば眠くなる彼女の習性を利用して。
「仕方ないから」と言える状況を作り出す。
俺が女に捕まってる間に男が声を掛けるもんだから気が気じゃなかった。
腕に絡みついていた女を容易く振りほどいて近づきながら2人の会話に聞き耳を立てた。
ナンパじゃないことを確認して安堵したのも束の間。親しげに話すその雰囲気に焦った。
この男は俺の知らないミアのことを知っている。
それが酷く気に食わない。
紹介される時もやはり友人止まりで。隣人と言われなかっただけマシだと言い聞かせた。
あの男がミアに懐いた経緯を聞いて「ミアらしい」と思うと同時に嫉妬した。
俺に対する態度は俺にだけ特別な訳じゃなく、ミアだから相手が誰だとしても同じように寄り添うのだと。
ミアだけだ。俺に一度でこんなにもいろんな感情を抱かせるのは。
こんなにも掻き回されるのは。
密かに燃えた嫉妬の炎は今、ミアの体温で優しく包まれ鎮火されていく。
バッキーはミアを抱えたまま、エントランスの鍵をポケットから取り出し開ける。
女性の中でも小柄なほうのミアは超人血清を受けた彼には彼女の体重は何の苦もないほどに軽い。
階段を上がり、ミアの部屋まで来ると腕の中で眠る彼女に声をかける。
「ミア」
ここまでスヤスヤと寝ていただけあって、そう簡単には起きないほど寝入っている彼女。