【MARVEL】This is my selfishness
第12章 10th
『ん〜?明日?明日はねえ…何か映画でも見ようかなあ』
「外で?家で?」
『家で。ゴロゴロしながら…あ、バッキーも来る?』
「いいのか?」
『うん、もちろん。あ、わたしやってみたいことある』
ゴロン、と体を回転させてうつ伏せ状態で肘を着いて上半身を少しだけ起こす。
『ピザ頼むの』
「……」
『ピザ』
いまいち反応を貰えないのでもう一度言ってみると「聞こえてる」と言われた。
「頼んだことないのか?」
『1人だと頼むことなくて。食べきれないし、なんとなく人が集まった時に食べるってイメージがあって』
今まで家に人を呼ぶこともなければ呼ばれたこともない。
学校のパーティーでいつの間にか誰かが頼んだピザが並んでいたくらいの記憶しかない。
『ピザ食べながらサブスクでドラマとか映画観ながらダラダラしたい』
そういうのって充実した休日感ない?お出かけしない充実した休日。
飲み物くらいは買いに行こうかな。
『一緒にしない?』
「する。それは俺もしたことない」
『え、そうなの?』
「昔はサブスクってのがなかったからな。あと家で過ごすより外で過ごすほうが多かった」
『もしかしてクラブとかパーティーによく行ってた?』
「ああ」
今で言う、陽キャじゃないか。だからあのパーティーで慣れてる感じがしたのかな。
その頃のことを思い出したのか、フッ、と柔らかい笑い方をしたバッキーの表情にキュン、としたような、ズン、てしたような複雑な複数の音がした。
複雑な音の正体は多分、一瞬でも、その頃出会っていたらとか、わたしが知らないその当時のバッキーと踊ったであろう知らない女性の存在を考えてしまったからだ。
『…わたしもクラブ行ってみようかな』
「は?」
想像をしてポツリと口をついて出た言葉を彼は聞き逃さなかった。
すかさず「なんて言った?」と聞いてくるので改めて言う。
『わたしもクラブ行ってみようかな』
「…行きたいのか?」
『うん、行ってみたい。行ったことないから経験してみたい。急に行っていいもの?』
「会員制じゃなければいつ行ったっていいだろうが…」