【MARVEL】This is my selfishness
第10章 9th
「君が望まないことをするかも」
言いながら右頬から離したわたしの左手の甲へキスをして、左腕をわたしの頭上の壁から離して自分の部屋へと行く。
呆気に取られたままのわたしを残して、「おやすみ」と言って部屋へと入っていった。
……な、な、ななに、なんだったの!
何秒だったのか、何分だったのか。
呆気に取られたまま、バッキーが部屋に入っていくのを見届けたあともその場で固まっていたわたしはハッとして、鍵を落としそうになりながら解錠して部屋へと慌てて入った。
か、壁ドンされた!!あれは多分、俗に言う壁ドンだ!
すごく距離が近くて、あと顔も近くて…!
震える左手にはバッキーの体温がまだ残っている気がする。
手の甲にはバッキーの唇の感触が残っている気がする。
わたしが望まないことって何?
囲うような距離で、自分の頬にわたしの手を当てて、手の甲にキスをして。
あの言い方で【望まないこと】って何?
わたしの頭ではあの視線にあの仕草だと経験したことはないけれど、キスとかそういう…男女のアレソレしか思い浮かばなくて(映画知識である)。
でもそれはわたしにとっては【望まないこと】ではない。
何なら【望むこと】だと思う。
わたしは。
わたしはもう、ただの隣人でお友達じゃなくて、バッキーと【そういう関係】になりたいんだ──────
……なんだか寝た気がしない。
いつも通りに起きて、いや起きたけど起き上がるのにひと苦労はして。本格的に筋肉痛がわたしの体の動きを鈍くしている。
あの壁ドンの件で高鳴った心臓がなかなか落ち着いてくれなくて、むしろ落ち着いたと思ったらまた思い出してしまってまた心臓が暴れ回って、、、とそのサイクルを繰り返していたせいだ。
お風呂に入ってる時も歯を磨いてる時だって無駄にソワソワした。
ベッドに寝転んでからも変に目が冴えてしまって、自分がどうやって寝ていたのかすらも忘れたように眠れなかった。