【MARVEL】This is my selfishness
第10章 9th
答えたのにジィ、と目をのぞき込まれ、目が合ったまま視線を離せない。
自覚した【好き】を見透かされてしまいそう。
「…筋肉痛で済んで良かった」
『う、うん、ほんとに、ィわっあ?!』
空気が柔らかくなった気がしたのに油断した。
その油断をつくようにぐわん、と視界が変わる。
お姫様抱っこをされて、視線が自分の普段のものより高くなった。
『びびびっくりした…!』
「歩くの、キツイだろ。部屋までこのまま行こう」
『いやっ、大丈夫だって!』
わたしの拒否は爽やかな笑顔でスルーされ、先程までのスピードとは比べ物にならないほどの速さで歩いて行く。
……もしかしてさっきまでゆっくり歩いていたのはゆっくりしか歩けないわたしに合わせてくれてた?
バッキーは早く帰りたいのにわたしを置いてさっさか歩く訳にも行かなくて、手っ取り早いこの形を選んだのでは、、
『ごめん、歩くの遅かったよね…』
大人しく彼の首と肩に掴まるようにして反省する。もうわたし、下ろせ!なんて言いません…の意を込めて。
「そういうことじゃない。本当に歩くのがキツイだろうと思ったんだ。仕事中もいつものような動きじゃなかったし、足が上がらなくてよく躓いてたろ」
警備員だからよく見てたんだ、と至近距離で優しい笑顔を見せつけられる。たまらない。
「アパートの階段を登る頃には自分を置いていけとでも言うんじゃないかと思ってな」
『そ、そんな、……言っ、てたかもしんない、、、』
そんなストレートな言葉で言わないと言いたいところだけど、二階建てのアパートで相手に先に上がっといてもらう理由なんて見つからない。
郵便受け見るから〜とか言ったところで2階からわたしの行動は筒抜けの丸見えだ。
『バッキーは筋肉痛とかなんないの?』
「ならないな」
『即答だ…』
「大体寝てれば治る」
『普段から動いてるから?』
「…かもな」
ヒュウ、と夜風が吹いても密着しているバッキーが暖かくて全然寒くない。
それどころか、肩に頭を預けると体温が混じり合うような感じで、歩くリズムで揺れるのも気持ちよくて睡魔が襲ってくる。