【MARVEL】This is my selfishness
第9章 小話1
「ちょっとそこのベンチで待っててくれ」
『、え?』
汗を手で拭いながら指さされた方向を見ると確かにバスケットコートの端にベンチがあった。
理由を聞き返すのも億劫なくらい体が疲れていて、言われるがままにそのベンチへ倒れ込むように座った。
しばらくしてバッキーが戻ってきた。
「タオルと水だ」
『うわあ、ありがとう、、』
自分でも買いに行こうかと思っていたけどどこかに寄るのも面倒になっていたし、汗だくすぎて店内に入ったら不審者扱いされるんじゃないかと思って買えなかったからすごく助かる。
お金、最小限しか持ってないから足りるかな。
「いや、要らない。応援とか労いとかそんな感じのやつだ。受け取ってくれ」
お財布を出そうとした手を止められた。
『そんな…』
「いいから。それより休んだらそのまま帰るんだろ?」
『え?うん。休んだあとはウォーキングで帰ろうかな』
休みの日にして良かった。これでこのあと仕事だったら確実に勤務中に眠くなるところだった。
『そういえばバッキーは仕事終わったところ?』
「さっき戻ってきたところだ」
『そっか、お疲れ様』
仕事終わりの人にわたしだけ労われてしまった、と思いつつありがたくお水を頂戴する。
『ふぁ〜、体に沁みる〜』
疲れた体にまだ冷たい水が沁み渡っていくようで心地いい。
何かで冷たい水より温い水とか白湯がいいって聞いた気がするけどそんなもの知ったこっちゃない。冷たい水は美味しいんだから。
『あ、わたしのことは気にせず帰って大丈夫だからね』
「ああ、ミアのことは気にせずまだ帰らない」
『…ん?』
気にせず帰るんじゃなくて帰らない??
バッキーも仕事終わりで疲れてるからまだ動かないってこと…?
そこから動かないバッキーと少し他愛もない話をして、ようやく回復して来たわたしはシャワーも浴びたくなってきたので帰ることにした。
するとやはり仕事で疲れてる云々だけでなく(ではなく?)、わたしの回復を待ってくれていたのか、彼も一緒に帰ることになった。