【MARVEL】This is my selfishness
第9章 小話1
引っ越してから前より甘いものを食べてる気がする。
あと体力が落ちてきているのか、疲れやすくなった気がして見よう見まねのなんちゃってジョギングをしてみようと思い立った。
ヨガをした時のようにラフなTシャツに部屋着に着るような緩い短パンに、なんとなくのストレッチレギンス。
持ってる靴の中でも比較的軽量でスポーティなシューズを履いて、ポシェットのように小さいボディバッグに小さいお財布とスマホ、家の鍵を入れてなんちゃってジョギングスタイルを完成させる。
軽く家の周りや公園近くを走ってみようかな。
と、思っていたのにどんなお店があるかとか、街並みとか、野良猫とか見ていたらいつの間にか遠くの方まで来てしまっていて、結局地図アプリで家までの道を検索しながらようやく知っている道まで戻ってきた。
その間も走っていはいるけど、スピードは徒歩の人にすら追い越されそうなくらいに遅い。
『ッハ、ハアッ…』
こんなに遠くまで来る予定じゃなかったのに……
タッタッタッタッ
後悔しているとわたしよりも軽やかなリズムでジョギングする人の足音が後ろから聞こえてきて、すぐにわたしの横を通りすぎ───────
なかった。
「Hi」
『は、ァ、Hi…』
「だいぶ疲れてるな。どうした?」
『へ、え?』
聞き覚えのある声だと思って横を通り過ぎなかった人を見る。
『ば、バッキー、!』
わたしが名前を言うと口角を上げてにこやかに笑いながら軽く手を挙げた。
「ジョギングしてたんだな」
『ッ、いつもはッ、して、ないん、だけど、』
さすがにジョギングしながら喋る体力は残っておらず、ノロノロだった足をゆっくり止めていく。
『さいきんッ、甘いもの、食べ過ぎ…だと、おもって、』
っはぁ、しんど。
息も絶え絶えにいつの間にか遠くまで行ってしまって、その帰りもついでと思って走ってこのザマだということを話すと彼は楽しそうに「真面目だな、歩けばいいのに」と笑った。
わたしも今まさにそう思ってる。
『ここからは、、、歩く、、』
「水は?」
『途中で買ってく…』